イラクの人々の闘い

~貧困・失業をなくし、政教分離の民主政府をつくるための新たな闘い~
                 2012年8月18日

ZENKO大会にイラクから来日したサミール・アディルさん(イラク労働者共産党)が7/28ZENKO大会シンポジウムで語ったイラクの民衆の闘いについてまとめました。(イラク平和テレビ局 in Japan)

IMG_0006.JPG来日したサミールアディルさん

●米軍撤退後の中東・イラク

 2012年2月25日以後、アラブ諸国での民衆蜂起の影響を受けて、イラクでも6ヶ月間、多数の都市で政府の腐敗と人権侵害、貧困に反対する民衆蜂起が起こりました。その時期こそ、民衆蜂起が成長、発展するチャンスだったのです。しかしイラク政府は新たな暴力をイラク社会に巻き起こし始め、それが運動に影響を与えました。そして民族浄化、宗派浄化がひろがり、2006から2007年の宗派間暴力が蔓延する状況とおなじ状態になってしまいました。
 それに加えてアラブ諸国のシリア・リビア・イエメンの民衆蜂起がNATO,アメリカの中東民衆蜂起を押さえ込む政策によって敗北を強いられてしまいました。そしてイラクは中東地域における国際紛争の戦場となってしまったのです。占領が破綻国家を作り出し、政府を構成する政党が国際紛争の代理人となっていることで暴力がエスカレートしています。そのことがイラク民衆にも影響を与えました。

●労働者の闘い

アブワタン.jpg石油労働者のデモ

 しかし、イラクでも新たな運動が高まっているのです。それは労働運動です。特に石油産業で政府・企業の腐敗に反対し、石油部門への投資にやってきた外国企業との契約に反対する闘いが、大きく起こりました。

 石油部門は公的部門であり、1987年にサダム政権によって定められた政令第151号によって、公的部門における組合活動、たとえばストライキ権や団結権や座り込みやいかなる抗議行動の権利も禁止されています。占領後、ポール・ブレマーが占領軍による市民法を制定しました。従来サダム時代の法律は全て破棄したのに、労働者に敵対する第151号だけはそのまま残されました。
 その後ブレマーのあとにできた暫定政権も、移行政府も、時限政府も、公的部門における労働者の権利に反する政令第151号を正当化していました。

 その一方で労働者の抵抗運動は決して終わりません。労働運動は高揚し続けています。マリキ政府はイラクの全ての公的部門を政府が直接管理するという新しい決定を行いました。この決定は「ストライキや座り込みやどんな抗議行動に参加する労働者に対しても、公的企業の経営者が解雇する権利を持つし、国家の安全を脅かしている時にもである」というものです。

しかし、労働者は抗議行動を決してやめません。繊維産業や、製薬会社や、汚職に反対する闘い、最低賃金の引き上げを要求する労働運動が高まりました。他の産業部門でもたくさんの抗議行動が起こっています。
 これがイラクの現状なのです。だからこの労働者たちを支援するために全ての人々や団体や労働組合に対してマリキ政権に圧力をかけるこの運動に参加するように呼びかけているのです。

●大学での闘い

 また、大学は教育省がマリキのイスラム主義政党ダーワ党の完全な支配下におかれています。教育省は多数のイスラム法を大学の中に強制しようとしました。たとえば、イスラム教の勉強を2つの大学、工科大学とナヒリン大学以外の全ての大学に押しつけようとしました。
 大学では、すこしでも政治的発言をすれば退学処分となっていしまいます。「ここは教育の場で政治活動する場ではない」と大学は言ってくるのですがイスラム主義者は大学で多くの政治活動しています。

 バビルという町の大学ではイスラム政党がベールをかぶった女性のポスターをはり、”名誉ある女性”と賞賛し、ベールをつけない女性のポスターには女性を侮辱する言葉を載せるなどして、女子学生にヒジャブ(ベール)の着用を強制したり、男女別学にしようとしました。
 しかし、大学でもイスラム宗派主義化と教育省に反対する大きな運動が起こりました。

●政教分離を求める闘い

 政教分離を求める運動が起こりました。この運動は政教分離の民族主義でない政府の設立を要求しています。まだ労働運動や大学での学生運動ほどには強くはありませんが、イラク市民が政府やダーワ党に反対する抵抗運動が存在するのです。

全ての抵抗運動に影響を与えている問題は安全問題です。暴力がイラクで増加し、この状況が運動に影響を与えています。運動に対して急速に悪い影響を与えています。その一方で、運動が起こっていて、マリキ政府もこの運動の事を感じています。

●マリキ政権の新自由主義政策

 マリキ政権はイラクに新自由主義政策を押しつけようとしています。この民衆の運動をおさえなければ、この新自由主義政策を進めることはできません。そのために、たくさんの法案が議会に提出されていて、政党法や労働法や通信法やメディア法を通そうとしています。これらの法案は全ての運動を押さえ込み、表現の自由や抗議権やストライキ権、組合結成の自由を攻撃することが狙いです。
 彼らは独裁政治を導入して社会を支配しようとしているのです。

●地域の組織化、social assosiation

 地域でやっているのは地域社会協会を設立することです。地域会は多くの活動をします。討論会を開いたり、労働組合や女性や学生の活動家を呼んでイラクの多くの社会問題を討論します。またイラクの状況に関するドキュメンタリーを上映して、私たちの現状に対する見解を示します。また絵画の展覧会を開いたりします。人権や女性の権利について進歩的な映画を上映します。また、こうした上映会は他の国とイラクとの連帯についてのものもあります。
 この地域社会協会は運動と地域の人々を結び、人々を集め、社会に関する伝統的な考えや民族主義者やイスラム主義者の思想を批判しています。

●政教分離の平和で安全な生活向上をおこなう民主主義のイラク政府を

労働者の闘いこそが、政教分離、安全な社会をつくりだします、チュニジアやエジプトの民主主義革命が継続しているのは、労働運動があるからです。新自由主義に対して闘うう勢力が労働運動であり、そこを軸にして貧困と失業をなくすために、今新しい運動体をつくっていこうとしています。


次週へつづく)

イラクの人々の現状

~国民の40%が1日1ドル以下の生活~

                   2012年7月30日

ZENKO大会にイラクから来日したサミール・アディルさん(イラク労働者共産党)から、米軍撤退後のイラクの人々の生活の現状について聞きました。(イラク平和テレビ局inJapan)



<生活状況>

イラクで作り出されたのは失敗国家でした。2003年のイラク侵攻以来の9年間の占領下で、4つの政権が作られました。しかし、イラクでは何も変わりませんでした。米国政権はイラク国民に繁栄と民主主義と自由をもたらすと言っていた宣伝は何もかもが大ウソであることが明らかになりました。

 今日、イラク労働省の統計や国連の報告によると、イラクの人口の40%が1日1ドル以下の生活をしています。また、イラク国民の27%は失業しているとしています。これはイラク政府の統計です。私は失業者は27%以上いるに違いないと思っていますが。

 また、400万人以上のイラク国民が国内と国外への難民になっています。特に直近の6ヶ月に新たな難民が再び生み出されています。そして「民族浄化」がイラクの多くの地域でまた始まっています。

 そして癌の患者が増えています。ガンはイラクの怪物です。その上、全ての癌の患者を治療する病院が足りません。

<電気も水も通っていない>

 また、今日のイラクの気温は摂氏54度にもなっているのに、電気が来ていません。イラク政府はこの10年間に270億ドル(約2兆1000億円)以上も出費しているのに、この資金は全て行方不明になっているのです。それでイラクの電気事情は全く改善されていません。

 さらに、イラク国民の70%~80%以上が清潔な水を得ることができません。さらに、いまだにインフラは10年前の方が今よりはましなのです。
何十億ドルもの資金が投資されているのに、なにも改善されず、雇用も見つかりません。また、イラクではいまだにゴミの山が多くの都市を覆っています。

 国連の報告とイラク政府によると、40%が1日1ドル以下の生活をしています。ということは餓えに悩む人がとても多いと言うことです。そういう人たちは、ゴミの中から食べ物を探して食べています。

 飢餓で死んだ人がどれくらいいるのかについての統計はありませんが、40%以上の国民が1日1ドル以下の生活をしていて、ゴミの中から食べ物を探し出す人がいると言うことは、人々の生活がどのようなものであるのかを物語っていますし、飢え死にする人がいるということを示しています。

 これがイラクで起こっていることです。イラクはとても豊かな国であり、世界の石油資源の11%がイラク国内にあります。ところが石油がこんなに豊かにあるのに、人々は飢え死にしているのです。

 健康的で十分な食料を得られなければ、多くの病気にかかります。劣化ウラン(放射能兵器)だけでなく、不健康な食べ物を食べたり、食糧が不足していると言うことも癌や多くの病気の原因となっています。これも飢え死にの原因となっています。

<イラク政府による人権侵害>

 その上、イラクでは人権侵害、人権問題があります。マリキ政権は何千もの罪もない人々に対して逮捕を開始しています。この逮捕はただスンニ派地域に住んでいるからというだけで行われているのです。

 国連の報告によると、過去3ヶ月に1140人のイラク国民が政府によって死刑を執行されました。その理由はこの人たちがテロリストだからだ、と正当化されています。*1

 さらに、占領終了後も人権侵害が作り出されています。この前の7月23日にもメディアが「血の月曜日」と名づけたテロ事件が起こりました。150人以上の市民が殺されたのです。それが1日で18の都市において行われました。これが米軍が撤退した後のイラクの簡単な状況説明です。

Q)本来豊かな国なのになぜ餓死者が出るのか?

 政府を構成する諸政党が全ての原因になっています。政府の汚職はイラクのもう一つのガンでもあるのです。石油資源も全て汚職に利用され、こうした政党によって盗み取られています。国民は石油資源の利益を何も得ていません。
イラク国民、勤労者の収入では家賃も食費も教育費も支払うことができません。なぜなら、40%の国民が1日1ドル以下の収入しかないからです。

補足)*1について
アムネスティ・インターナショナルが、イラクのアンバール県で、200人近くの死刑執行が承認されたことについて、イラク当局に対し、すべての未処刑の死刑判決を減刑し、死刑廃止を視野に入れ、死刑執行を一時停止するよう求めています。
⇒クリックLinkIconイラク:196人の死刑執行を停止すべき

以上の現状を7/26外務省・国会議員にも訴えてきました。報告を合わせてご覧ください。⇒クリックLinkIcon国会要請報告

つづく) 次回は、人々の闘いについて

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IMG_5210.JPG国会議員に現状を伝えるサミールさん 2012/7/26